新幹線も終電繰り上げ 上越新幹線で20分程度 労働力不足も増える老朽化・地震対策工事

JR東日本は、新幹線設備のリニューアルや地震対策の工事量が増えていることを受け、上越新幹線で最終列車の時刻繰り上げを実施して夜間工事の作業時間拡大を図ります。

建柱車を活用してコンクリート柱を耐震性の高い鋼管柱へ取り替える工事の様子(画像提供:JR東日本)
建柱車を活用してコンクリート柱を耐震性の高い鋼管柱へ取り替える工事の様子(画像提供:JR東日本)

建設業の「2024年問題」も深刻

JR東日本によると、新幹線の安全運行のために延べ40万人の作業従事者を投入し、年間5万件の設備メンテナンスを継続的に実施しているとのことです。さらに、開業後40年以上が経過した東北・上越新幹線ではリニューアル工事も始まっています。今後10年間で約400kmのレール交換、約800kmの架線交換が必要で、橋りょうやトンネルなど土木構造物の大規模改修も計画されています。

このような中、2021年、2022年と2度の福島県沖地震が発生し、いずれも復旧まで長期間の運休を余儀なくされました。これを受け、レールの転倒、トンネルの剥落、電柱の傾斜・折損を防止する地震対策工事が拡大して実施されています。

一方、生産年齢人口が年々減少しており、鉄道工事の担い手確保はそれ以上に厳しい状況とのことす。同社管内の軌道工事従事員は10年前から約2割減少しており、今後もこの傾向は続くと見込まれています。さらに、働き方改革関連法により建設業に労働時間規制が適用される「2024年問題」に直面しており、同社も労働環境の改善を進めていく考えですが、労働力不足はさらに深刻化します。

(新幹線の工事を取り巻く環境、工事推進への対応、上越新幹線の現行の最終列車時刻など詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】新幹線の工事を取り巻く環境、工事推進への対応、上越新幹線の現行の最終列車時刻

在来線は終電繰り上げで作業効率アップ

こうした状況でも少人数で多くの工事ができるよう、JR東日本は大型機械を用いた工事手法への転換に取り組んでいます。新幹線ではレール更新車、道床掘削機、多機能保全車といった大型機械がすでに導入されており、ここ10年間で同社の大型機械保有台数は約25%増えています。今後、技術開発を進めてさらに導入を拡大し、省力化を進めたい考えです。

鉄道工事で働き方改革を実現し、工事を着実に推進していくためにもう一つ必要となる対応は、夜間作業の時間拡大です。在来線では2021年3月のダイヤ改正で終電繰り上げを実施し、すでに1割程度の施工効率の向上や労力軽減につながる事例も出ているとのことで、新幹線にも同様の考えを広げます。

同社管内の新幹線のうち、上越新幹線は終電から初電までの作業時間が短いとのことで、2024年春のダイヤ改正に合わせて終電時刻が20分程度繰り上げられます。一部、接続する在来線についても利便性を確保できるよう検討を行うとのことです。

なお、東北・北陸新幹線の終電繰り上げについては今後の状況を見極め、引き続き検討していくとの言及にとどめています。